悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
あのテーブルクロスは彼女にとっては自信作だったようだが、私の方が遥かにレース編みの腕前が上であることはわかっているようだ。

あんなに慌てた顔をしていたのだから。

上手なものと比較されたら、王女のクロスは余計に下手くそに見えて、恥ずかしい思いをすることだろう。


王子が私のレースを褒めるときの、王女の悔しそうな顔が見たかった。

彼女の嫌がらせによって私は温室で倒れたのだから、それくらいの仕返しをしても許されるわよね。


幼い頃から繰り返し聞いた、父の教えが頭に流れる。

『やられっ放しではいけない。注意深く相手を貶めて、自分が優位に立つことが大切だ』

ええ、お父様。
私はきちんと教えを守りますわ……。


自室に戻ってアマーリアとのお茶の時間に使ったテーブルクロスを手にし、すぐに廊下に出る。

仕返しができることに心が弾み、自然と歩調が速まった。

しかし、軽やかに階段を降りている途中、二階の踊り場で足を止められてしまう。


「やあ、オリビア。そんなに急いでどこへ行くの?」


二階フロアから階段へと現れて、私の前に立ったのは王太子殿下だった。

とっさにテーブルクロスを背に隠した理由は、仕返しに気づかれたくないと思ったせいだ。

彼は私が王女を許したものと思っているはず。

そうではないとわかったらきっと、得意の綺麗事を並べて私を諭しにかかることだろう。

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