悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
そのとき柱時計の針が、十六時四十分を差した。
王太子のもとへ行くために、私は編みかけのレースを置いて立ち上がる。
「行ってくるわ」と王女に声をかけた私の顔は、きっと緊張に強張っていることだろう。
それはお茶の時間に粗相をするという企みを、抱いているためだ。
しかし私の心を読めずにいる王女は、勘違いをして励ましてくれた。
「大丈夫よ、きっとお兄様はロザンヌ嬢よりオリビアを選んでくださると思うわ。わたくしもあなたの味方。リラックスして普通にお茶を楽しめばいいのよ」
違うのに……という反論は口に出さず、「ええ」と硬い表情のままで頷いて、私は王女の私室を出た。
今日も私は、銀のバラの髪飾りを横髪に留めている。
以前、王太子が褒めてくれたように、私もこの髪に似合うと思っているから、好んでつけていた。
それを外したのは、彼の花嫁候補から無事に除外されることを願ってのことだった。
呼ばれているのは、西棟の二階にある応接室。
王太子の執務室に隣接した部屋だ。
そこまで行くとドア横に控えていたメイドが、ドアを開けてくれた。
中に一歩入ればすぐに王太子の姿を目にする。
彼は窓辺に立っていて、前庭を眺めている様子。
廊下でバッタリと出くわすときは改装の彼だが、今は金刺繍の施された濃紺の上着に、襟元には豊かに襞を寄せるシルクのジャボットと、気品のある装いで私を待っていてくれた。
王太子のもとへ行くために、私は編みかけのレースを置いて立ち上がる。
「行ってくるわ」と王女に声をかけた私の顔は、きっと緊張に強張っていることだろう。
それはお茶の時間に粗相をするという企みを、抱いているためだ。
しかし私の心を読めずにいる王女は、勘違いをして励ましてくれた。
「大丈夫よ、きっとお兄様はロザンヌ嬢よりオリビアを選んでくださると思うわ。わたくしもあなたの味方。リラックスして普通にお茶を楽しめばいいのよ」
違うのに……という反論は口に出さず、「ええ」と硬い表情のままで頷いて、私は王女の私室を出た。
今日も私は、銀のバラの髪飾りを横髪に留めている。
以前、王太子が褒めてくれたように、私もこの髪に似合うと思っているから、好んでつけていた。
それを外したのは、彼の花嫁候補から無事に除外されることを願ってのことだった。
呼ばれているのは、西棟の二階にある応接室。
王太子の執務室に隣接した部屋だ。
そこまで行くとドア横に控えていたメイドが、ドアを開けてくれた。
中に一歩入ればすぐに王太子の姿を目にする。
彼は窓辺に立っていて、前庭を眺めている様子。
廊下でバッタリと出くわすときは改装の彼だが、今は金刺繍の施された濃紺の上着に、襟元には豊かに襞を寄せるシルクのジャボットと、気品のある装いで私を待っていてくれた。