悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
作戦の失敗を悟り、私は被っていたナプキンを外して膝の上に戻す。

彼はまだ笑っていて、それほどまでに私の努力は滑稽に映ったのかと、恥ずかしく思っていた。

頬の火照りを気にして手の甲をあてていたら、やっと笑いを収めた彼が潤む瞳を拭ってから、「オリビアは可愛いな」と私を評価した。


「俺に嫌われようとしたんだね? 申し訳ないが余計に好ましく思えたよ。けなげに頑張ってくれたけど、俺には通用しないから、そこまでにしておいて。これ以上やられると、腹筋がつりそうだ」


なにもかもお見通しというように微笑する王太子を見て、社交の場で作り笑顔を浮かべる父に少し似ていると思っていた。

本心を隠しているような微笑み方だ。


しかし、そこには父のような腹黒さは感じられず、なにかを企んでいそうに見えても、それは真っ白で清らかな謀なのだろう。

彼の思惑を探りたくても、まだ羞恥の中にいる私は青い瞳から目を逸らして俯いた。

鼓動は二割り増しで速度を上げていて、早くお茶の時間が終わってほしいと心で願っていた。

すると正面から小さなため息が聞こえ、「君は誰か、他に好意を寄せる男性がいるの?」と優しい声で問いかけられた。
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