悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「そ、そのような殿方はおりません」
「それならば、なぜ俺を不機嫌にさせようとした? 君は俺が嫌いなの?」
嫌い……ではない。
この王太子を嫌いな人がいるだろうか。
誰にでも親切で人当たりがよく、心から綺麗事を言っているような人なのに。
私はただ、彼が苦手なだけ。
彼に接すれば、自分の心がひどく汚れて見えてしまう。
その汚れは、貴族社会で優位に立っていられるようにという父の教えが染みついた結果であり、もう純粋だった少女の心は取り戻せない。
彼は決して責め立てるようなことはせず、緊張をほぐして悩みを聞き出そうとするような柔らかい声色で、私に説明を求めてくる。
なんと答えるべきかと迷ったが、逃げるような返事をしても見破られそうな気がして、小さな声で本心を明かした。
「苦手なのです。王太子殿下の清らかなお心が……。父の性格はご存知かと思いますが、私は父に似ています。心が汚れている私では、殿下の妃に相応しいとは思えません。どうか候補者から外してくださいませ」
沈黙の間が空いて、私の鼓動はさらに加速する。
本心であっても、王太子の尊厳を傷つけない言葉選びをしたつもりであったが、それでも私から花嫁候補を辞退するのは失礼に違いない。
父に迷惑をかけることになったらどうしようと、俯いたままで危ぶんでいたら、突如「よかった」とホッとしたように呟く声を聞いた。
「それならば、なぜ俺を不機嫌にさせようとした? 君は俺が嫌いなの?」
嫌い……ではない。
この王太子を嫌いな人がいるだろうか。
誰にでも親切で人当たりがよく、心から綺麗事を言っているような人なのに。
私はただ、彼が苦手なだけ。
彼に接すれば、自分の心がひどく汚れて見えてしまう。
その汚れは、貴族社会で優位に立っていられるようにという父の教えが染みついた結果であり、もう純粋だった少女の心は取り戻せない。
彼は決して責め立てるようなことはせず、緊張をほぐして悩みを聞き出そうとするような柔らかい声色で、私に説明を求めてくる。
なんと答えるべきかと迷ったが、逃げるような返事をしても見破られそうな気がして、小さな声で本心を明かした。
「苦手なのです。王太子殿下の清らかなお心が……。父の性格はご存知かと思いますが、私は父に似ています。心が汚れている私では、殿下の妃に相応しいとは思えません。どうか候補者から外してくださいませ」
沈黙の間が空いて、私の鼓動はさらに加速する。
本心であっても、王太子の尊厳を傷つけない言葉選びをしたつもりであったが、それでも私から花嫁候補を辞退するのは失礼に違いない。
父に迷惑をかけることになったらどうしようと、俯いたままで危ぶんでいたら、突如「よかった」とホッとしたように呟く声を聞いた。