悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
必要以上に私を構っていたというのに、彼としても候補者から外したかったのだろうか……?

『よかった』という言葉の意味をそう捉えて前を向けば、彼は空になった自分のカップに紅茶を注いでいるところだった。

二杯目はミルクティーで。
そのまろやかさをゆっくりと堪能してからカップを置き、彼は私と視線を合わせた。

その瞳からは、私に対する好意的な気持ちが消えているようには見えず、戸惑っていた。


「オリビアに嫌われていなくてよかった」


そういう意味での『よかった』だったの……。

期待外れな反応に微かに顔を曇らせれば、彼はクスリと笑う。


「心配しなくていい。苦手意識を持ち続けたままの君を娶ることはしない。今の君では、俺の妃となることは苦痛でしかないようだからね」


その返事に胸を撫で下ろそうとしたが、引っかかりを感じて考え込んだ。

『苦手意識を持ち続けたままの君』『今の君』と彼は言った。

その言葉の裏には、私を変えてやろうとする心があるのではないかと勘ぐっていた。

その疑問を投げかけようとしたけれど、その前に彼がワゴン上の呼び鈴を鳴らしたので聞けずじまい。

すぐにドアの外に待機していたメイドが入ってきて、王太子の指示によってテーブル上のものを手早く片付けると、ワゴンを押して出ていった。

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