悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
片付けられたということは、もうお茶の時間はおしまいということだろう。

私を花嫁候補から外すのか、外さないのか。その結論を聞かされないままに退室しなければならないのは不満だけど、仕方ない。

そう思って椅子から腰を浮かしかけたら、「もう少し付き合って」と、これで終わりではないことを告げられた。


姿勢正しく座り直した私の前で、彼は意味ありげな笑みを浮かべる。

膝にのせていた白いナプキンをつまむと、なぜか広げてヒラヒラさせ、表と裏を私に確認させる。

それからそのナプキンを、左の手のひらに被せたら……布地の中央が急に盛り上がった。

左手には、なにものっていなかったはずなのに、どうして!?


奇術を披露してくれる彼に、私の迷いや悩みは一時中断され、好奇心に目を輝かせる。

この前のように、素敵なものが魔法みたいに現れるのかしら……?


彼から贈られた銀のバラの髪飾りはここに来る前に外したため、今は横髪が寂しく感じられる。

新しい髪飾りを期待しているわけではないけれど、ナプキンの膨らみ具合から、それではないかと予想していた。

ワクワクと胸を高鳴らせる私を焦らすように、彼はたっぷり十秒ほどの間を取って、それからニコリと微笑みパッとナプキンを外した。
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