悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
素直だと褒められたのは、四、五歳の幼い頃まで。

成長した私は、やすやすと心を見せたりしないのに、王太子にかかれば感情を表に引っ張り出されてしまう。

まるで仮面を剥がされ素顔を見られたような心持ちで、恥ずかしくなり、椅子に座り直すと澄まし顔を作った。


そんな私をクスリと笑い、彼は正解を教えてくれる。

上着の袖をまくって見せられたブラウスの袖口には、外したはずのカフスボタンが留められていた。


いつ、どうやって留め直したの!?
彼の手元から目を離さなかったのに……。

澄まし顔は早くも崩され、またしても素直な驚きを顔に表してしまったら、フッと笑われ、「オリビアの負けだよ」と言われた。


「さて、俺の願いを聞いてもらおうか」


テーブルの上に指を組んだ両手をのせ、彼は魅惑的な笑みを浮かべている。

そういえば、そういう話だったわね……。

簡単そうなゲームに思えたから、負けた時のことを深く考えていなかった。

人のよい彼のことだから、意地悪な要求はされないと思う。

けれど心はハラハラと落ち着かず、そんな私の動揺が見えているかのように、彼は「心配しなくていい」と言った。

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