悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「おかしな要求はしないよ。君ができることだ」

「はい……。それで、どのようなことなのでしょう?」

「明日の午後は、仕事の予定を入れていない。久しぶりに秘密の場所に出かけようと思ってね。そこに君を連れていきたい」


その言葉に私は微かに眉を寄せ、考え始めた。

彼の外出に同伴することは容易いが、それを他の貴族に知られると困ってしまう。

王太子が私を花嫁に決めたのではないかという噂が流れることを懸念しているのだ。

その一方で『秘密の場所』という言葉に、興味をそそられてもいた。

それは奇術を披露される前の、はやる気持ちに似ていて、どんな場所なのだろうと好奇心が湧いていた。


懸念と好奇心に揺れる気持ちに折り合いをつけようとして、私はこう思うことにする。

秘密の場所ということは、ふたりで出かける姿を他の貴族に見られることはないだろう。

誰もが訪れる場所ならば、秘密とは言えないからだ。


自分を納得させてから「わかりました」と首を縦に振れば、彼も頷き、満足げに瞳を細めた。

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