悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
胸に手をあてれば、弾む鼓動を感じる。

心なしか頬も熱い気がするわ……。

彼の行為を照れくさく感じて目を泳がせ、またしても私らしくない態度を取っていることに戸惑っていた。

彼の前だと平常心が簡単に崩されてしまい、やはり苦手意識を覚えるけれど、不思議と今はそれが嫌ではなかった。

腹黒い私には似合わない白いバラの生花が、なんだかくすぐったい……。


王太子にもう一度お礼を述べてから、自室に戻ろうと、ひとり廊下を歩く。

明日の午後は、秘密の場所に連れていってくれるという。

それを煩わしく思わずに、なにを着ていこうかと、少しだけ心を弾ませていた。



翌日、午前中はいつものように嫌味を言われながら王妃の身の回りのお世話に従事した。

午餐の食事を他の侍女たちと一緒に食堂で取ると、私は急いで自室に戻る。

時刻は十三時半を回ったところ。

十四時に迎えに行くと、今朝王太子からの伝言を受けたため、急いで外出の支度に取りかかった。


メイドに手伝ってもらって着替えたのは、エメラルドグリーンのドレス。

レースやフリルで贅沢に飾られていて、普段着ではない訪問用のデイドレスだ。

それに合わせて同系色の鍔広の帽子と、パンプス、日傘も用意した。
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