悪役令嬢の華麗なる王宮物語～ヤられる前にヤるのが仁義です～

成長とともに忘れてしまった、子供の頃の感情。それに似たものが今、私の胸を満たしている。

心臓が波打ち、冷めていた心が温められていくのを微かに感じていた。

それは心地よくもあるけれど、公爵令嬢として持つべき感情なのかと考えれば……口元に浮かんでいた笑みは消え、心の温度はすぐに下がる。


子供じみた考え方をしていては、いつか誰かに足元をすくわれる。

常に冷静でしたたかに。なにが自分の利益となるかをよく考えないと。

気持ちを高ぶらせて判断を誤れば、家に迷惑をかけてしまうかもしれないわ。


今日のアマーリアはなぜか心配そうな顔をしているように見えた。

「大丈夫よ。もうすっかり落ち着いたもの。これがいつもの私よ」と声をかけて、微笑んでみせる。

そのとき、ドアがノックされ、「オリビア、迎えに来たよ」と王太子の声が廊下から聞こえた。

迎えに来る話は聞いていたが、まさか王太子自らが私の部屋を訪れるとは思っていなかった。

きっと彼の近侍を寄越すのだろうと予想していたのだ。


アマーリアをベッドに戻すと、私は急いで帽子を被って日傘を持ち、ドアを開けた。


「お待たせいたしました」