悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
『え?』と心で呟いたのは、王太子が軽装をしているからだ。
ブラウスに黒のズボンとブーツ。それだけで、一体どこへ出かけるつもりなのかと不思議に思っていた。
すると彼に、私の方こそ間違えているのだと教えられる。
「普段着でいいと伝えるように言ったんだけど、俺の近侍は忘れてしまったのかな。ごめんね。帽子も日傘もいらないよ。とても素敵なそのドレスも脱ぐことになる」
「ぬ、脱ぐのですか!?」
目を丸くした後に、どういうことなのかと眉をひそめた。
根っからの善人かと見なしていたのに、もしかして彼は巧妙に下心を隠していたのではないかと怪しんだのだ。
たとえ相手が王太子であっても、嫁入り前の体を汚されては困る。
足を半歩後ろに引くと、彼は私の疑念を見透かし、苦笑いした。
「違うよ。俺が女性に乱暴を働くように見えるかい?」
「いえ、そうではありませんが……」
「なにも心配いらない。こっちで用意した衣装に着替えてもらうだけなんだ。さあ、行こう。時間がなくなってしまう」
帽子を脱いで日傘も部屋に残し、私は彼と並んで長い廊下を歩く。
天井近くにあるアーチ型の明かり取りの窓からは、澄み渡った青空が見え、そこに顔を向けた彼は独り言のように呟いた。
「雨が降らなくてよかった。俺ひとりなら雨天でも構わないけれど……」
ブラウスに黒のズボンとブーツ。それだけで、一体どこへ出かけるつもりなのかと不思議に思っていた。
すると彼に、私の方こそ間違えているのだと教えられる。
「普段着でいいと伝えるように言ったんだけど、俺の近侍は忘れてしまったのかな。ごめんね。帽子も日傘もいらないよ。とても素敵なそのドレスも脱ぐことになる」
「ぬ、脱ぐのですか!?」
目を丸くした後に、どういうことなのかと眉をひそめた。
根っからの善人かと見なしていたのに、もしかして彼は巧妙に下心を隠していたのではないかと怪しんだのだ。
たとえ相手が王太子であっても、嫁入り前の体を汚されては困る。
足を半歩後ろに引くと、彼は私の疑念を見透かし、苦笑いした。
「違うよ。俺が女性に乱暴を働くように見えるかい?」
「いえ、そうではありませんが……」
「なにも心配いらない。こっちで用意した衣装に着替えてもらうだけなんだ。さあ、行こう。時間がなくなってしまう」
帽子を脱いで日傘も部屋に残し、私は彼と並んで長い廊下を歩く。
天井近くにあるアーチ型の明かり取りの窓からは、澄み渡った青空が見え、そこに顔を向けた彼は独り言のように呟いた。
「雨が降らなくてよかった。俺ひとりなら雨天でも構わないけれど……」