悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
そう言うということは、目的地までの移動距離は長いのだろうか?

馬車から降りて外を歩く時間もあるのかもしれない。

昨日言われた『秘密の場所』について、なんの情報も与えられていないので、外出のイメージがつきにくい。

着替えが必要ということにも、首を傾げるところだ。

それで「目的地はどのような場所なのでしょう?」と尋ねてみたが、「着くまで秘密」と、いたずらめかしたウインクを返されただけで教えてくれなかった。

端正な彼の横顔から視線を逸らして前を向いた私は、聞かなければよかったと後悔する。

余計に気になって、胸がドキドキと落ち着かないわ……。


南棟の螺旋階段を下りる。

一階に着いても足を止めず、彼は地下に向けてステップを下りていた。

私もその後に続きながら、新たな疑問に眉を寄せる。

外出しようというのに地下に下りるなんて、どういうことなの……?


聞いても秘密だと言われそうなので、黙って彼の後ろをついていくと、城の最下層である地下二階に行き着いた。

空気はひんやりとして、廊下の燭台に明かりが灯されていても薄暗い。

地下に足を踏み入れたのはこれが初めてで、私はキョロキョロと辺りをを見回している。

そんな私を横に並ばせた彼は、「こっちだよ」と廊下の奥へ足を向けながら説明してくれた。
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