悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
男性の裸を見たいと思うなんて、私はいつからそんなにいやらしい女になったのよ。

いつもの自分を見失ってはいけないと戒めながら、彼に対して文句も湧いていた。

あまり私を困らせるようなことを言わないでほしい。自分が変わってしまいそうで、少しだけ怖いのよ……。


背後では衣擦れの音が聞こえていて、それは一分とかからずにすぐにやんだ。

「いいよ」と言われて振り向けば、私と同じように彼も粗末な衣装を身につけている。

襟がVの字に開いた七分袖の貫頭衣に、枯葉色のズボンとそれより濃い色のベストという、農民風の姿だ。

いずれ国王となる高貴な身分の彼が、こんな格好をするなんて……。


私たちがこのような服を着た理由はおそらく、お忍びで農村地帯まで出向くからだろうと推測できたが、ここまでする必要があるのだろうか。

戸惑う私に彼は素敵に微笑み、生成りの貫頭衣の袖を撫でて言った。


「こうして庶民の服装をすれば、彼らの心に寄り添える気がするんだ。そんなことくらいで苦労を知った気になるなと言われてしまうかもしれないけどね」


庶民の心に寄り添う?
その言葉を不思議に思う私は、自然と首を傾げていた。

なぜ貴族が庶民の気持ちを知る必要があるのか。私にはそれが理解できない。
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