悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
疑問は口に出さずとも伝わったようで、彼は補足してくれる。


「領民を幸せにできない領主にはなりたくない。民がいてこその領主だ。俺はいつも彼らに感謝しているよ」


青い瞳は力強く輝いて、それが偽りの綺麗事ではなく、本意であることが伝わってきた。

民がいてこその領主。そのような考え方をする貴族が、この国に何人いるだろうか?

きっと少ない気がする。私も、領民に関心を向けたことがなかったからだ。


彼が口にした感謝という言葉に、考えさせられる。

何不自由なく暮らしていることを当たり前のように捉えていたけれど、領民が働いてオルドリッジ家を支えてくれるおかげなのよね。


そんな彼らの生活を守るのが領主の務め。

父の治めるオルドリッジ領も、母の辺境伯領も、豊かな農地を有し交易も盛んで、領民からは陳情はあっても苦情があったという話は聞いたことがない。

けれど貴族の集まりの場では、よその領地で貧しい農民たちの反逆行為があったという話を耳にしたことが数回ある。

貴族たちは蜂起した民を悪党のように話していたから、私もそのような感覚の中にいたけれど……間違っていたのかもしれないわ。

悪いのは、民の生活を豊かにしてあげられない無能な領主の方なのだ。

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