悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
新しい考え方を教わった後では、この粗末な衣装への捉え方も変わる。

機能的で動きやすく、軽やかな服だ。

レースのついたドレスでは麦の穂を刈り取ることはできないし、土にまみれて汚れても、これなら簡単に洗えてすぐに乾きそう。

これは生活に適した服であり、このような格好で働く民に私たちは支えられている。

粗末だなんて、言ってはいけないわ……。


目の覚めるような思いで彼を見つめて、「よくわかりました」と頷いていた。

「オリビアは素直ないい子だね」と前と同じような褒め方をしてくれた彼は、「さあ、準備ができたから出発だ」と声を弾ませた。


なぜかドアではなく、六角形のこの部屋の暖炉に向かう彼。

なにをしているのだろうと私が見つめる先で、彼は暖炉の横の飾り柱に両手をかけて力を込める。

すると柱が横にスライドし、体を横にすれば人が入れそうな空洞がポッカリと現れて、私は目を丸くした。

これは隠し通路かしら……。


「オリビア、おいで。怖がる必要はないよ。俺を信じて」


彼は安心を与えるような穏やかに低く響く声でそう言って、頼りがいのありそうな片腕を私に向けて伸ばした。

「はい」と私は歩み寄り、彼の手に右手を重ねる。

そうしたら、ワクワクと心が高ぶるのを感じた。

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