悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
石を積み上げた壁に、彼の頭がつきそうなほどに低い天井。

人工的に造られた洞窟のような場所で、空間はさらに奥へと延びているようだ。

ぼんやりと辺りが確認できるのは、ランプを携えた男性がふたり、私たちを待っていたからだ。


ひとりは王太子の近侍で、グラハムという名の三十歳の青年だ。

グラハムさんとは初対面ではなく、言葉を交わしたことが数回ある。今朝、出かける時間を伝えにきてくれたのも、彼だった。

黒っぽい濃い茶色の肩ほどまで伸びた髪をひとつに束ね、丁寧で紳士的な物腰が特徴の彼は、私たちと同じような衣装を身につけていた。

外出に同行するということだろう。

「殿下、オリビア様、お待ちしておりました」とグラハムさんが姿勢正しく頭を下げた後に、もうひとりの青年が進み出て、石畳みの地面に片膝をついた。


ツンツンと尖った茶色の短髪で、頑強そうな体型の彼は、私と初対面。

年齢は二十七、八といったところか。

彼も農民風の出で立ちをしているが、君主の前に膝をつく姿は、護衛兵であることが窺えた。

それはあたっているようで、「私はダウナーと申します。王太子殿下の護衛を務めております。オリビア様、以後お見知り置きを」と挨拶してくれた。

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