メガネ男子と虹の空
 顔が赤くなるかと思った。あと三秒見つめられていたらそうなっていた。
 現実には樽見さんのほうが先に目を逸らした。
 もしかしたら照れているのかもしれない。私に甘党だと指摘されたときと同じ顔になっている。

 ただそれを確かめることはできなかった。偶然、樽見さんの知りあいに会ったからだ。取引先の方らしい。
 私の存在に目を留めるなり、その人はぱっと表情を変えた。

「デートですか。いいですね」

 樽見さんは否定も肯定もしなかった。



 店を出るころには日が沈みかけていた。真っ直ぐ進むと大通りに行き当たるはずだ。
 その方角から大音量の音楽がこちらまで届いており、音だけではなく屋台でなにかを焼いている香ばしい香りも運ばれてきていた。
 地区の祭りを知らせる張り紙やのぼり旗がちらほらと見える。

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