最後の花火
 のりが悪いと言われているようで落ち込む紗菜に、朝陽は手元の雑誌を閉じて意外なことを言った。

「冗談ぽくかわしてくるかと思ったんだ。希なんかいつもそんなだし。まさか真に受けるなんて思わなかった」

 紗菜が顔をあげたところに優しい言葉が降りてきた。

「紗菜って素直なんだね」


 語りかけるように言われてぽかんとしてしまった。さっきまでのずかずかと踏み込んでくる発言とはえらい違いだった。これはこれでどうしたらいいかわからなかった。
 部員の呼ぶ声が聞こえてきて、ふたりはみんなのいる部屋へ戻った。紗菜はいまので助けられたような邪魔をされたような複雑な気持ちだった。

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