Blizzard Love
「いや、大丈夫です。ほんと、すっごい恥ずかしいんで。」

そうはにかんだ表情が、またグッとくる愛らしさでドキッとしてしまう。

いやいや

ダメだから。

「怪我がないなら良かったです。」

「ありがとう、じゃあ。」

「じゃあ。」

会釈を返して、走り去ったその人のことを見送って・・

姿が見えなくなった頃に

足元に「それ」があるのに気がついた。

その人のパスケース

絶対に間違いない。

拾い忘れてたんだ・・!

だけど

どう考えてももう遅い。

名前も知らないしどこの誰かもわからない。

・・あ、そうか

パスケースなんだから、それを見たら分かるわけだ。

どこの

誰なのか

ユキは公園に移動してベンチに腰掛けてパスケースを開いた。

サイオンジ トオル

カタカナの名前が定期券に印字されてる。
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