イジワル外科医の熱愛ロマンス
「ありがとうございます」


そう言って、彼が爽やかに微笑みかける。
女性ドクターはわかりやすく顔を赤く染めて、ちょっとおどおどしながら、


「か、かんぱーい!」


と上擦った声をあげた。


それぞれみんな、天井に突き上げるようにジョッキを掲げ、「かんぱ~い!」と呼応する。
そして、疎らな拍手が湧き上がった。


早速女性ドクターたちが身を乗り出し、我先にと自己紹介を始めるのを横目に、隣で美奈ちゃんがウキウキと独り言を漏らす。


「カッコいいなあ~。目の保養。嬉しいな~」


私に少し身を寄せながら、目線をテーブルの真ん中に向ける彼女に、私はジョッキを両手で持って苦笑した。


「美奈ちゃん、そんなこと喜んでていいんですか?」


ちょっとだけ意地悪も含めてそう言うと、彼女は「あ」と口を大きく開けて、慌てたように勢いよく首を横に振った。


「もちろん、浮気じゃないですよ!? でも、同じ医局にイケメンがいてくれるの、嬉しいじゃないですか」


美奈ちゃんがポッと頬を赤く染めて、ムキになって言い返してくる。


私たちのやり取りが聞こえたのか、それとも美奈ちゃんの反応くらいお見通しなのか。
彼女の向こう側の席から、木山先生がニヤニヤしながら顔を覗かせてきた。
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