イジワル外科医の熱愛ロマンス
「でしょ、でしょ?」


隣で美奈ちゃんが、何度も首を縦に振っているのが、視界の端っこに映り込む。
視界のど真ん中は祐が占めていて、徐々に大きくなるその姿から、私は焦点を外すことができない。


「宝生先生に任せる講義のオリエンテーション終わって、そのまま一緒にメシに来たんだ。な?」


早苗さんの隣に回る祐に、木山先生が同意を求めるように顔を上げる。
祐はテーブルにトレーを置きながら、「はい」と返事をした。


「あ、あの、初めまして! 私、整形外科医局の秘書です!」


祐とは初対面の早苗さんが、彼の方に軽く身体を向けた。
ペコッと頭を下げて、自己紹介している。
祐も彼女に目線を動かし、ニコッと笑いかけた。


「ご丁寧にどうも。心臓外科医局助教の宝生です」


挨拶を返されて舞い上がる早苗さんを横目に、私は祐から顔を背けた。


食事はほとんど進んでいないけど、定食のトレーを持って席を立ってしまいたい。
だけど、みんなの前で、それはあまりにも不自然だ。
結局、祐の姿を視界から排除するくらいしか、私にできることはない。


とにかく、もう少し食べ進めよう。
そうすれば、急ぎの仕事を思い出したとでも言って、先に戻ってもおかしくない。


「? 雫さん? どうしたんですか? なんかいきなり食欲出てきたみたいですね」
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