イジワル外科医の熱愛ロマンス
急いで箸を動かし始める私に、美奈ちゃんが巻き取ったパスタをパクッと口にしながら首を傾げた。


「は、はい」


必死になって口を動かし、くぐもった声で返事を返す。
美奈ちゃんと逆の隣の席から、木山先生が祐に話しかけるのが耳に届いた。


「しかし、宝生先生って多才なんだな。さっきの自己紹介、驚いたよ。まさかピアノが弾けるとは」


どこか感心したような木山先生の言葉に、私の耳はピクッと反応して、せかせかと動かしていた手が止まってしまう。


「え。そうなんですか? すごい! ピアノ弾ける男の人って、なんかいいですよね~」


早苗さんが、いつもよりちょっとテンション高く反応を返す。


「そうそう。今日オリエンテーションに来てた女子学生、みんなそんな反応だった。『カッコいい~』って聞こえた。僕なんか、音符も読めないってのに」


木山先生がボヤくのを聞いて、祐が「はは」と笑う。


「子供の頃、無駄にいろいろ習わされたってだけです」

「へえ……そんなにいろんな習い事してたんですか?」


早苗さんが話題を広げると、木山先生がそれに答える。


「宝生君の実家、病院経営してて、彼はいわゆる御曹司だから。日舞も習ってたとか言ってたぞ」


早苗さんが『ええ~っ!!』と、なんだか悲鳴のような声をあげるのを聞いて、美奈ちゃんがクスクス笑いながら、一番端から身を乗り出した。
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