イジワル外科医の熱愛ロマンス
「ピアノなら、雫さんも弾けますよね。あ。毎年附属病院でやる年末恒例の『ジルベスタ―コンサート』、二人で心臓外科医局代表で出演するとか、どうです?」

「えっ!?」


美奈ちゃんのとんでもない提案に、私はギョッとして大きく目を剥いた。
木山先生が「面白そうだな」と頷くのが視界の端に映り、私は慌てて彼の方に顔を向けた。


「やめてください。無理です。習ってたのは、小学生の時のことで……」


そう言って話題を終えようとしたのに、「面白いですね」と祐が私を遮った。


「今は自信がないって言うなら、教えてあげるよ。弾けないところは俺がカバーしてやる。俺と本郷さん、同級生に当たるから、そういうイベントに頼ってでも、もっと仲良くなりたいって思ってたんだ」

「っ……」


思わず言葉に詰まる私に、彼が上目遣いの視線を向けてくる。
バチッと宙の真ん中で目が合ってしまった。
祐の瞳に射貫かれた感覚を思い出し、私の胸がドキッと震えた。


「えーっ。『仲良く』って。なんか意味深じゃないですか?」


早苗さんがちょっと拗ねたように言って、なんとも言えない羨ましげな視線を私に向けてくる。
祐はふふっと受け流すように笑って、「どう?」と小首を傾げ、私に返事を促す。


上目遣いに探る瞳。
私の反応のすべてが、観察されている。
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