イジワル外科医の熱愛ロマンス
「言ったろ。俺は、お前を待ってる間に逃げられたんだ。あんな屈辱、二度とごめんだ」


なにかいつもと感じの違う彼に、私の胸がドキドキと騒ぎ始める。


「祐……?」


恐る恐る呼びかけた声に戸惑いが滲むのが、自分でもわかった。
けれど、祐は身体の向きごと変えて、私に背を向けてしまう。


「大人しく俺のものになれよ、雫。俺が手加減をやめたら、お前は必ず屈服する。抗うだけ無駄なんだから」

「なっ……!」


あまりにも傲慢な言い草に、私はそれ以上言葉を発せずに絶句した。
祐がなにを考えているのか、全然理解できない。
まるで、なにを言っても相容れることのない、別世界の人間のようにしか思えなかった。


「なあ、雫」


祐は片手を白衣のポケットに突っ込み、私に向かってゆっくり一歩足を踏み出した。
身体を硬直させて立ち尽くす私の頬に、祐がスッと手を伸ばす。
反射的にビクッと身を震わせる私を見て、彼は顔を歪めた。


「二次元の……ゲームの男に、なにができるんだよ」


祐はどこかやるせない表情で目を細め、私の頬を包み込むように触れる。
その感触に、私の身体がピクリと小さな反応を見せる。


「こんな風に触れることもできない男にドキドキして……そんなの、なにが楽しい?」


私がなにも返事をしないのに焦れたのか。
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