イジワル外科医の熱愛ロマンス
途端に、翔君と『雫』のキスシーンのイラストスチルが展開される。
前触れがなかったせいでドキッとして、慌ててアプリを落とした。


たとえ創られたゲームの世界でも、私はこうやってドキドキできる。
だけどもちろん、昼間祐に心を揺さぶられた時のような、ゾクゾクくる感覚はない。


『好きだ、雫』

「っ……」


祐に抱き締められたことを思い出した途端、彼が囁いた言葉が、私の胸を過る。
今までになく鼓動が跳ね上がり、私は思わず胸に手を当てた。


鼓動はそのまま加速していく。
胸が苦しい。
私はスマホを手から落とし、ベッドの上で身体を抱えて蹲った。


狂おしいほど祐を欲しがるなんて、そんな自分になりたくない。
私には恋なんて無理だから、抗いようもないくらい堕ちるなんて、怖くて堪らない。


『現実世界で乱れて見せろよ』


最後に言われたその言葉に、胸がドクッと抉られるような音を立てる。


「乱れるなんて、とんでもないことを……!」


全身に熱が帯びるのを感じて、私はベッドに突っ伏した。


祐の復讐は意地悪すぎる。
これ以上動揺しまくって、仕事でミスを重ねるわけにはいかないのに……。


「そうだ、ミス……」


ボーッとしたまま、私は無意識に呟いた。
木山先生に、ちゃんとお詫びしなきゃ。
それを思い出して、私は一度時計を見てベッドから降りた。
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