イジワル外科医の熱愛ロマンス
気遣ってくれてるのかもしれないけど、木山先生の返事にホッとして、私は顔を上げた。
ちょっとぎこちなくなりながらも、なんとか微笑んで見せる。
そんな私に、木山先生は微かに眉を曇らせた。


「……で? 僕が気になるのは、本郷さんがこんな風にお詫びしなきゃいけないほど、ミスを連発してる理由の方なんだけど」

「え?」


どこか声を潜める彼に、私はギクッと顔を強張らせた。
私の反応を見て、木山先生は「はあっ」と声に出して溜め息をつく。


「本郷さんの仕事ぶりは、いつも評価している。僕は准教授で君の上司だから、仕事に支障が出るほど困ってることや悩んでることがあるなら、相談してほしいと思ってた」

「あ……」


美奈ちゃんも含めて一緒に話をしている時は、上司とは思えないほど、砕けた気さくな人だと思う。


医局のドクターたちだけじゃなく、私や美奈ちゃんにまで、面倒見のいい准教授。
私の前の秘書さんの恋を後押ししたのも彼だそうだ。


『恩を売る』ことに味をしめたとかで、美奈ちゃんに『腹黒』と言われても、彼女の恋を取り持ったのだって、木山先生。
そんな木山先生が私の前で『上司』の顔をして、心配してくれる。
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