イジワル外科医の熱愛ロマンス
まず私を座らせてから、自分も隣に腰を下ろす。


「もしかして……宝生先生となにかあったとか?」


少し低めた声で探るように問いかけられ、私は思わずズッと鼻を啜り上げた。
次の瞬間、激しく動揺して、「えっ!?」とひっくり返った声で聞き返していた。


「あ、やっぱりそう? なんか昨日の学食での様子を見ても、宝生先生が結構グイグイいってるのは読めたからね~」


木山先生は予想が当たったというように満足げに目を細め、顎を摩りながら『うんうん』と何度も首を縦に振っている、けれど。


「ち、違います、先生! 違うんです!!」


私は焦りながら勢いよく口走った。
木山先生は、私の珍しいテンションに目を丸くしながらも、「ん?」と首を傾げて先を促してくる。


その仕草に、私は一度自分を落ち着かせようとして、胸に手を当てながら大きく深呼吸した。
そして、口を開く。


「言い寄られてる、とか。そう取られてしまっては、困るんです」

「それは、君が? 宝生先生が?」

「……宝生先生は、ただ面白がってるだけです。そういうことに不慣れな私が、慌てて動揺してワタワタするのを見て、楽しんでるんです」

「楽しむって……」


木山先生はほんのちょっと苦笑しながら、相槌を打った。


「で、本郷さんの方には、そうやって面白がられなきゃいけない心当たりでもあるの?」
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