イジワル外科医の熱愛ロマンス
「え?」


逆に私は木山先生に訊ね返した。
彼はふふんとちょっと悪そうな笑い方をする。


「我慢できずに泣くほど困ってるのに、君は宝生先生から受ける意地悪を、上司である僕にも黙っていようとした」


そう言われて、私は無意識にヒクッと喉を鳴らした。


「腑に落ちない。それに君たち、医局で出会ってまだ一ヵ月も経たないでしょ」

「? ……はい」

「それでどうして、宝生先生が君が『不慣れ』だと知って、ピンポイントの攻め方ができるのか。いや、知らないにしても、どうして本郷さんを苛めてからかって満足なわけ?」


腕組みしながら小首を傾げ、木山先生は私に探るような視線を向けてくる。
指摘された私は、余計なことを言ってしまったことに気付き、ハッとして息をのんだ。
慌てて口を両手で押さえたけれど、もちろん遅い。


「もともと知り合いなんだろ。宝生先生と」


木山先生は私の反応を目を細めて観察しながら、ニヤニヤと笑う。


「あ、う……」

「いや、『知り合い』なんて浅いもんじゃないね。相当古くから縁深い関係にありそうだ。君が言えない理由も、そこにある」


そう言われて、私はとうとう口ごもってしまった。


あまり病院で臨床医としての姿を見ない木山先生でも、さすがにドクターだ。
洞察眼に優れていて、私と祐の関係の核心に迫り、暴いていく。
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