イジワル外科医の熱愛ロマンス
「本郷さん。ついでに、もう一点。……これは医局でも僕や教授、それから当時からいる一部の講師しか知らないことだけど、宝生先生が研修医としてここに来ていた時、彼には婚約者がいた」
「っ」
「お相手は、宝生家に引けを取らない旧華族の血筋のお嬢様。もちろん、なんの遜色もない。だけどその後、彼の婚約が破談になったことは、ニュースでも騒がれたし、僕も知ってる」
「……!」
身を覆う頑強な鎧を、一つずつ削ぎ落していくような、木山先生の追い詰め方。
ジリジリと崖っぷちに追いやられる感覚に、私は言葉を失った。
「君が医局の採用面接に来たのは、教授と浅からず縁のある大地主のお嬢さんだから、とか。『本郷』っていう名字は、確か戦国時代の武将の血を引く直系子孫の一族の物だと、なにかで聞いたことがある」
木山先生は講義をするような口調で朗々と説明して、言葉を切った。
そして、黙ったまま床に視線を落としている私を、横から斜めの角度で見つめてくる。
「君が宝生先生にどんな仕打ちを受けているのか知らないが、そもそも彼は今もなくそんなことをする男じゃないし、君が抗えないのは、彼に負い目があるから。……本郷さん、君が宝生先生との縁談を一方的に破談にして、彼の元から去った元婚約者だ。そうだろ?」
伏せたままの横顔に、鋭い視線が刺さるように感じる。
「っ」
「お相手は、宝生家に引けを取らない旧華族の血筋のお嬢様。もちろん、なんの遜色もない。だけどその後、彼の婚約が破談になったことは、ニュースでも騒がれたし、僕も知ってる」
「……!」
身を覆う頑強な鎧を、一つずつ削ぎ落していくような、木山先生の追い詰め方。
ジリジリと崖っぷちに追いやられる感覚に、私は言葉を失った。
「君が医局の採用面接に来たのは、教授と浅からず縁のある大地主のお嬢さんだから、とか。『本郷』っていう名字は、確か戦国時代の武将の血を引く直系子孫の一族の物だと、なにかで聞いたことがある」
木山先生は講義をするような口調で朗々と説明して、言葉を切った。
そして、黙ったまま床に視線を落としている私を、横から斜めの角度で見つめてくる。
「君が宝生先生にどんな仕打ちを受けているのか知らないが、そもそも彼は今もなくそんなことをする男じゃないし、君が抗えないのは、彼に負い目があるから。……本郷さん、君が宝生先生との縁談を一方的に破談にして、彼の元から去った元婚約者だ。そうだろ?」
伏せたままの横顔に、鋭い視線が刺さるように感じる。