イジワル外科医の熱愛ロマンス
私は、膝に置いた両手で、無意識にスカートの裾をギュッと掴んでいた。


なにか言おうとして口を開く。
でも、木山先生の説明を聞きながらいつの間にか緊張感を漲らせていたせいか、喉がカラカラに渇いていた。
出そうとした声は、喉に貼りついてしまって、出てこない。


「……恨まれても仕方がない。そう思ってるから、我慢するしかないってことなんだろ?」


しばらく無言で私の反応を待ってくれた木山先生が、返事を促すように言葉を重ねた。


それを聞いて、私はゆっくり目を閉じる。
そして、観念すると、「はい」と短い返事をした。


「でも」


私は再び目を開き、反論の一言を発した。


「恨まれてるわけじゃない。宝生先生は、婚約解消で彼が受けた屈辱を晴らしたいだけ。彼が私に復讐して、満足したら……それで終わるはずなんです」

「屈辱? 復讐? 満足って……どうやって?」


木山先生は、どこか困惑したような口調で、私に質問を畳みかけてくる。
けれど、それ以上は口を閉ざす私に、困ったように目を細めた。


「なんか、僕の想像以上に、複雑な引っかかりがありそうだな。だったら……仕方ない。こうなったら、君にも一肌脱いであげよう」


わずかな逡巡の後、大きく胸を張った木山先生に、


「はい?」


私はちょっと訝しい気持ちで聞き返した。
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