イジワル外科医の熱愛ロマンス
人工心肺からの回復を見届けて、私と木山先生は見学ルームを出た。
研修医たちには、縫合まで見学して、後日レポートを提出するよう指示が出されている。
木山先生は午後から大学で講義があり、引率指導は午前中だけの予定だからだ。
「どうだった? 元婚約者がオペをする姿を、初めて生で見た感想は?」
附属病院を出たところで、そう訊ねられた。
その言葉にはトラップがあるような気がして、私は慎重に受け答える。
「心臓外科医としての宝生先生は、立派だと思いました」
「それだけ?」
「はい」
私の返事に、木山先生は『はは』と苦笑した。
「本郷さん、なかなか手厳しいな」
そう言われて、私は黙って肩を竦める。
心の緊張を少し緩め、気付かれないように小さな息を吐く。
私が自分と向き合う為に、何故『立派な』祐の姿を見る必要があったのか、それはやっぱりよくわからない。
ちょうどお昼時。
木山先生にランチに誘われて、附属病院から医学部棟に戻る前に、大学の学食に一緒に立ち寄った。
そこで、美奈ちゃんとその彼である脳外科医局の一色先生と、偶然ばったり鉢合わせた。
「あれ、お疲れ様です。……お二人お揃いですか~?」
美奈ちゃんが小首を傾げて、私と木山先生を交互に見遣ってくる。
「ここんとこお二人、なんか医局でもコソコソ話してますよね~。怪しいなあ」
研修医たちには、縫合まで見学して、後日レポートを提出するよう指示が出されている。
木山先生は午後から大学で講義があり、引率指導は午前中だけの予定だからだ。
「どうだった? 元婚約者がオペをする姿を、初めて生で見た感想は?」
附属病院を出たところで、そう訊ねられた。
その言葉にはトラップがあるような気がして、私は慎重に受け答える。
「心臓外科医としての宝生先生は、立派だと思いました」
「それだけ?」
「はい」
私の返事に、木山先生は『はは』と苦笑した。
「本郷さん、なかなか手厳しいな」
そう言われて、私は黙って肩を竦める。
心の緊張を少し緩め、気付かれないように小さな息を吐く。
私が自分と向き合う為に、何故『立派な』祐の姿を見る必要があったのか、それはやっぱりよくわからない。
ちょうどお昼時。
木山先生にランチに誘われて、附属病院から医学部棟に戻る前に、大学の学食に一緒に立ち寄った。
そこで、美奈ちゃんとその彼である脳外科医局の一色先生と、偶然ばったり鉢合わせた。
「あれ、お疲れ様です。……お二人お揃いですか~?」
美奈ちゃんが小首を傾げて、私と木山先生を交互に見遣ってくる。
「ここんとこお二人、なんか医局でもコソコソ話してますよね~。怪しいなあ」