イジワル外科医の熱愛ロマンス
「そんなことないと思うけど……。も~、雫さん。『私なんか』なんて言ってちゃダメですよ。もっと積極的に! グイグイ行きましょうって!」


グッと拳を握って私を鼓舞する美奈ちゃんに、ほんのちょっと苦笑する。
彼女がその言葉通りグイグイ行って、一色先生を射止めた時のことを思い出したからだ。


「そりゃあ、美奈ちゃんは可愛いですから。グイグイ来られて、一色先生だって嬉しかったでしょうし……」


自分でもひねくれた言い方だなと思いながらも、ぎこちなく笑った。
美奈ちゃんは、『もう!』と唇を尖らせる。


「私のこと可愛いって言ってくれるのは嬉しいんですけど! 私、雫さんって素敵な女性だと思います」

「また、そんなこと言って……」

「だって! この間、宝生先生も言ってたじゃないですか。雫さんと仲良くなりたいって」


美奈ちゃんが突然口にした祐の名前に、私はドキッとしてしまう。


「えっ。な、なんでそこで宝生先生ですか」

「だって、そう言ってたし」


そう言って胸を張る美奈ちゃんに、私は「はは」と頬を引き攣らせた。


「あの人のは、ただのリップサービスに決まってます」

「もー……。そんなことないですよ。宝生先生、すごく急いで雫さんのこと追っかけたんですよ。『怒らせちゃったみたいだ、謝らないと』って」

「っ……え?」
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