イジワル外科医の熱愛ロマンス
美奈ちゃんに勢いよくバンと背を叩かれ、私は「うっ」と呻きながら軽く前につんのめった。


「でも~……。それだけじゃないですよ。私から見て、雫さんには木山先生より宝生先生の方がお似合いのような気がします。なんでしょね。あ、やっぱり『同級生』だから?」


サラッと一言付け加えて、美奈ちゃんはニコニコしながら私の横を擦り抜けた。
先に進む彼女の背を、苦笑いしながら見送ってしまってから、私はハッと我に返った。


「え? ちょっ、美奈ちゃん! だからと言って、『後押し』されては困ります……!!」


慌てて美奈ちゃんの後を追おうと足を一歩踏み出してから、私はその場で立ち尽くしてしまう。


美奈ちゃんがなんの気もなく言った『お似合い』という言葉に、私の胸がトクンと小さく跳ねる。
そのまま静かにドキドキと打ち始める胸に、私はそっと手を当てた。


「私は『ブス』って言われたもの。美奈ちゃんが絶賛するほどイケメンの祐と、お似合いなわけないじゃない……」


祐が私のことを好きだなんて、美奈ちゃんの変な勘違いに決まってる。
それに、今、私が祐を避けるのは、『好きだから』じゃない。
祐を求める私にされては、困るから。


私には、恋のキューピッドなんて必要ない――。


私は目を伏せて唇を噛んだ。
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