イジワル外科医の熱愛ロマンス
同級生といっても、生まれはほとんど一年の差がある。
小学生くらいまでは、どうしたって成長速度が人より遅い私にとって、祐はなにに置いても私の先を行くすごい人だった。


と言っても、アラサーの今となっては、他の子に比べて成長が遅かったことなんて、それほど大した問題じゃない。
なのに今、私は改めて祐との距離を感じていた。


幼い頃はただついて行きたくて。
並ぶこともできないのが、歯痒くて。
そのうち、彼の存在は遠くなり、やがて私は諦めた。
追いつくことも、恋をすることも。


そして、同僚として働く今、祐はやっぱり私を簡単に惹きつける。


それは悔しいようで、どこか懐かしいような、変な感覚。
さっきリアルで見た、器具を操る祐の手が、今もなお、目の前でしなやかに蠢いているように感じる。


一瞬ボーッとしてしまい、パソコンで作成していた講義資料が、もやっと歪んでいく。
気が遠くなるような感覚に、ハッとして我に返った。
慌てて頭を大きく振って、まるで映像のようにリアルに蘇る祐の姿を吹き飛ばした。


その後は仕事に集中した。
二時間ほど経った時、電話の一次対応をした美奈ちゃんが、「雫さ~ん」と言いながら、デスクから私を振り返ってくる。


「お電話代わってもらっていいですか? 園田教授のスケジュールの件みたいなんで」
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