イジワル外科医の熱愛ロマンス
マウスを動かす手を止め、顔を上げて「はい」と返事をすると、卓上ホルダに挿してあるPHSが着信音を奏でた。
手に取りながら美奈ちゃんに軽く合図をする。
彼女はそれを確認して、自分のデスクに真っすぐ向き直った。
「お待たせいたしました。心臓外科医局秘書の本郷と申します」
私は電話に応答しながら、作業途中の資料を一度閉じ、教授のスケジュールをパソコンモニターに展開させた。
相手は附属病院の院長秘書さんだった。
来週の週末、GW前半を迎える金曜日の夜、会食のお伺いという用件。
その内容と日時を聞いて、私は無意識に眉を寄せてしまった。
困ったな……。
その日程で入れるとなると、少し大がかりなリスケが必要だ。
『調整してご連絡いたします』と言って電話を切った時、ちょうどよく園田教授が医局に戻ってきた。
それを見て、反射的に「あ!」と言いながら立ち上がってしまう。
「園田教授! オペお疲れ様でした。あの……」
ドア口に踏み出した途端、私は言葉をのんで足を止めた。
「ん? 本郷君、なんだい?」
いつも通り、スーツの上から白衣を纏った痩身の園田教授の後から、ブルーのユニフォーム姿の祐が続くのを見てしまったからだ。
恐ろしい宣言をされたあの日から、祐はずっと病院での業務に追われていて、医局に顔を出すことがなかった。
手に取りながら美奈ちゃんに軽く合図をする。
彼女はそれを確認して、自分のデスクに真っすぐ向き直った。
「お待たせいたしました。心臓外科医局秘書の本郷と申します」
私は電話に応答しながら、作業途中の資料を一度閉じ、教授のスケジュールをパソコンモニターに展開させた。
相手は附属病院の院長秘書さんだった。
来週の週末、GW前半を迎える金曜日の夜、会食のお伺いという用件。
その内容と日時を聞いて、私は無意識に眉を寄せてしまった。
困ったな……。
その日程で入れるとなると、少し大がかりなリスケが必要だ。
『調整してご連絡いたします』と言って電話を切った時、ちょうどよく園田教授が医局に戻ってきた。
それを見て、反射的に「あ!」と言いながら立ち上がってしまう。
「園田教授! オペお疲れ様でした。あの……」
ドア口に踏み出した途端、私は言葉をのんで足を止めた。
「ん? 本郷君、なんだい?」
いつも通り、スーツの上から白衣を纏った痩身の園田教授の後から、ブルーのユニフォーム姿の祐が続くのを見てしまったからだ。
恐ろしい宣言をされたあの日から、祐はずっと病院での業務に追われていて、医局に顔を出すことがなかった。