イジワル外科医の熱愛ロマンス
窓を背にした大きく立派なデスクの前に、簡易応接セットがある。
向かい合った二人掛けのソファに、私は教授と向き合って、祐と並んで座る羽目になった。


「じゃ、聞こうか、本郷君」


教授に促され、私は手にしていた手帳をゆっくり開いた。
ちょっと大きく動いたら、隣に座る祐の腕に肘がぶつかってしまいそうで、意識的に仕草を小さくする。


「附属病院長から、お伺いがありまして……」


そう切り出した私が伝えた日付を、教授はデスクに置かれた卓上カレンダーで確認している。
「ん?」とわずかに目を細めたのは、もちろんその日に出張予定があることに気付いたからだろう。


「困ったな。その日は宝生君と大阪の国際医療フォーラムに出席した後、そのまま宿泊予定だったな」


そう呟きながら確認する教授に、私より早く祐が返事をした。


「はい。私は医療フォーラム後、東京に戻りますが、教授は翌日朝から中京医科大学で附属病院視察のご予定があり……」


そう、それは私ももちろん把握していた。


「院長との会食は、他の日にできないのか?」

「それが……七月に行われる血液内科医局の教授選の件で、他医局の教授も招かれているとのことでした。あの……僭越ですが、ほとんど教授会のようなものになるかと……」
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