イジワル外科医の熱愛ロマンス
私もちょっと言い辛い気分でそう呟くと、教授も眉を寄せて溜め息をついた。


「なるほど。それでは、私は東京に戻るしかないな。翌日の予定は、木山君に代わってもらうわけにはいかないかね?」


教授がここで自分の代わりに木山先生にお願いしようとすることは、私も予想していた。


「それが、木山先生は休暇を取得されてまして……」


手帳のページを捲って返事をする私の隣で、祐が軽く身を乗り出した。


「教授。それなら、病院視察は私が引き受けましょう」

「え? 宝生君が?」


祐の申し出を聞いて、園田教授は何度か目を瞬かせた。
祐は私の隣で軽くソファに背を預け、「はい」と返事をする。


「ご視察ということなら、なにも准教授・教授じゃなければならないということはないかと思います。園田教授が、翌日また大阪に戻るのも大変ですし、私が代わりに残ればいいだけのことです。それが一番本郷さんのリスケもスムーズなのでは?」

「まあ、確かにその通りだが……なんせ宝生君はあちらの院長や教授と、まだ面識もないことだし。そうなると、彼らに君を紹介できる人間を同行させた方が……」


祐の申し出に頷きながらも、教授はそう言ってわずかに逡巡した。
私の横で、祐がフッと微笑む気配を感じる。


そこはかとなく嫌な予感がして、私は無意識に顔を横に向けた。
それと同時に。
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