イジワル外科医の熱愛ロマンス
だけど、それは予想外に早く、しかもむちゃくちゃ急だった。


どうしよう。出張はもう来週だ。
普通、学会などで同行する際は、もっと早くから出張の予定が立てられる。
だから、心の準備をする時間もあると思っていたのに……。
いきなり来週に決まってしまい、私の焦りは静かに煽られていく。


「よし。それなら問題ないな。本郷君、手配を頼むよ」


園田教授がにこやかにそう言った時、教授のデスクのPHSが着信音を奏でた。
教授はソファから立ち上がって、デスクに向かっていく。


教授の背を呆然と見送る私の隣で、緩めがソファの背に身体を預け、長い足を組み替えた。
彼の黒い革靴が、床から持ち上がるのを、私はただ視界の端っこに映すだけ。


「公然と、二人きりだな」


いつもよりトーンを低めた声で、祐が呟いた一言に、胸の鼓動が大きくリズムを狂わせた。
咄嗟にお尻の位置をずらして祐の方に身体を向けると、彼は胸の前で腕組みをした格好で、ニヤリとほくそ笑む。


「なんなら、俺と一緒に前泊するか?」


反応を試すような意地悪な言葉にも、私の胸はドキドキと加速してしまう。


「ど、同行するのは当日だけです。私まで宿泊する必要は……」


激しく動揺しながら、私は急いで立ち上がった。
マズい。早く当日の新幹線を手配しないと。
世間はもうGWなのだ。
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