イジワル外科医の熱愛ロマンス
でも、お互いに少しは好意があったもの、とでも思ってるんだろう。
だから、私がそこまで嫌がる理由を、わかってはもらえない。
ところが、私たちの間にはこれっぽっちの好意もなく、もちろんなんの実態もなかった。
『婚約者』ではなくただの同僚でしかない今、祐との距離が強引に縮められていく。
私はただ混乱していた。
なにをどこまで、どう説明すればいいんだろう。
結局私は黙ったまま、膝の上で両手をぎゅっと握り締めた。
自分でも思う以上に力がこもり、血の気を失い蒼白になった手が、カタカタと震えてしまう。
木山先生は大きく広げた足に肘をつき、組み合わせた両手の指に顎を置いた。
軽く背を屈めた姿勢から、私を上目遣いに見つめてくる。
俯く私の耳に、木山先生の小さな溜め息が聞こえてきた。
「一肌脱ぐって言ったしね。こうなったら、ちょっと強めの防御線張っておくかな」
そう言って、木山先生がソファから立ち上がる。
「え?」
彼の言葉と行動につられ、私も聞き返しながら顔を上げた。
「宝生先生は? まだ教授室にいる?」
「は、はい。今日のオペのことで、園田教授とお話しされていて……」
訊ねながらさっさとドアに向かう木山先生に、私も慌てて立ち上がって返事をした。
彼はそれを聞いて「よし」と呟く。
だから、私がそこまで嫌がる理由を、わかってはもらえない。
ところが、私たちの間にはこれっぽっちの好意もなく、もちろんなんの実態もなかった。
『婚約者』ではなくただの同僚でしかない今、祐との距離が強引に縮められていく。
私はただ混乱していた。
なにをどこまで、どう説明すればいいんだろう。
結局私は黙ったまま、膝の上で両手をぎゅっと握り締めた。
自分でも思う以上に力がこもり、血の気を失い蒼白になった手が、カタカタと震えてしまう。
木山先生は大きく広げた足に肘をつき、組み合わせた両手の指に顎を置いた。
軽く背を屈めた姿勢から、私を上目遣いに見つめてくる。
俯く私の耳に、木山先生の小さな溜め息が聞こえてきた。
「一肌脱ぐって言ったしね。こうなったら、ちょっと強めの防御線張っておくかな」
そう言って、木山先生がソファから立ち上がる。
「え?」
彼の言葉と行動につられ、私も聞き返しながら顔を上げた。
「宝生先生は? まだ教授室にいる?」
「は、はい。今日のオペのことで、園田教授とお話しされていて……」
訊ねながらさっさとドアに向かう木山先生に、私も慌てて立ち上がって返事をした。
彼はそれを聞いて「よし」と呟く。