イジワル外科医の熱愛ロマンス
私も、この先木山先生がなにを言おうとしているかは想像できない。
なにかソワソワと不安な気分になり、そっと横に出て彼を見上げた。


「あの……木山先生?」


窺うように呼びかけると、木山先生は祐に向けて「マズくはないんですけど」と言ってから、私を見下ろしニコッと笑った。


「個人的に心配でね。ほら、宝生先生、本郷さんと仲良くなりたいって言ってたし。仕事とは言え、君と二人きりにはしたくないんだよね」

「……はい?」


祐も木山先生がなにを言おうとしているか、読めないのだろう。


「せ、先生……?」


視界の端に映り込んだ祐が、眉を寄せて聞き返すのを見て、私も木山先生に声をかけた。
私と祐、二人の視線を受けても、木山先生は飄々とした笑みを浮かべたままだ。


「だからね。僕と約束してくれるかな。これを機に、本郷さんとの仲を深めようなんて実力行使には出ないこと」

「実力行使って……」


はっきりそう言われても、祐にも木山先生の真意が掴めないんだろう。
困惑したように、その言葉を繰り返す。
私は慌てて木山先生の白衣の袖をちょんと引っ張った。


「先生、なにを仰るんですか? いったい……」

「君もだよ、本郷さん。いくら宝生先生がイイ男だからって、なびいたりしたら許さない」
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