イジワル外科医の熱愛ロマンス
美奈ちゃんと一緒に話を聞いてくれた木山先生は、納得したように黙って何度か頷いた。
そして、こう言ってくれた。


『そういうことなら、もうしばらく宝生先生の前では、僕と付き合ってる設定、続けておこう』


木山先生が席を立ち、私と美奈ちゃんも話を切り上げて仕事に戻った。
美奈ちゃんは黙々と仕事に取り組んでいた様子だったけど、どうやらずっと、私の話を考えていたようだ。
だからこそ、終業と同時に私を捕まえに来たんだろう。


私の方は……祐との関係を医局の人たちに知られたら、恥ずかしくて医学部棟から飛び降りたくなるなんて思っていた。
だけど実際に知られてみると、むしろちょっとホッとしていた。


美奈ちゃんに言った『スッキリしました』は、まさに今の私の正直な心境だった。
私の返事を聞いて、美奈ちゃんは少し緊張したように表情を引き締め、カウンターの上に両腕を乗せ、身を屈めるようにして切り出した。


「ほんと言うと……多分木山先生も、口で言うほど納得してないと思います」

「え?」


開口一番でそう言われ、私はきょとんとしてパチパチと瞬きをした。


「婚約を破棄した間柄だから、気まずいとか。雫さんが宝生先生を嫌う……と言うか、避ける理由にはなるかもしれないけど。そもそも、なんで婚約破棄したんですか?」
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