イジワル外科医の熱愛ロマンス
美奈ちゃんは、ググッと身を乗り出して畳みかけてくる。
私はドキッと胸を跳ね上げながら、わずかに背を逃した。
美奈ちゃんは、その分だけ距離を狭めてくる。


「それは……もともと祖父に勝手に決められた婚約でしたし。私も彼の方も、お互い好意なんかなくて」


美奈ちゃんから目を逸らし、間違ってなんかないと自分を鼓舞して、私はなんとか返事をした。
けれど美奈ちゃんは、それを否定するかのように、途中から首を横に振り出した。


「違う! 違います、雫さん。嫌ってるのは、雫さんの方だけです!」

「え……?」


何故だか強気で断言されて、私は困惑しながら聞き返した。


「さっきも言ったじゃないですか。宝生先生は、絶対雫さんのこと好きですって」

「っ……な、なんでそんなこと、美奈ちゃんに言い切れるんですか」

「じゃあ雫さんだって! 宝生先生の方に雫さんへの好意がないって、なんで決めつけるんですか!」


プクッと頬を膨らませる彼女のその言葉に、私の顔は一瞬にして強張った。
いつものほほんと呑気な美奈ちゃんだけど、こういう時、意外と鋭いのは私もよく知っている。


『決めつける』。
それと同じことを祐にも言われた。
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