イジワル外科医の熱愛ロマンス
その時のことを思い出してしまい、私は言葉に詰まって口を噤んだ。
美奈ちゃんは私をジッと見つめてから、「ふうっ」と唇をすぼめるようにして息をつく。
「適当なこと言ってるわけじゃないですよ、私」
そう言って少し身を起こし、私に上目遣いの視線を向けてくる。
「私……研修医時代の宝生先生、知ってます。いつも忙しくて、あんまり親しく会話したことはなかったんですけど、彼に婚約者がいるっていうのは、聞いたことありました」
「……あ」
美奈ちゃんに導かれるように、私は木山先生にもそう言われたことを思い出した。
彼女は医局の中でも古株だから、研修医時代、祐が婚約していたことを知ってても不思議はない。
「あの通りのイケメンだし……同じ研修医だけじゃなく年上の女性ドクターからも、ずいぶんと誘われてたんですよ。でも、『大事な婚約者がいるので』って、いっつも門前払いしてて」
美奈ちゃんがムキになって言葉を重ねてくる。
私は即座に、「それは」と反論した。
「穏便に断るには、ちょうどいい言い訳だからに過ぎません。実態がどうあれ、そう言っておけば……」
絶対の強気を貫けるはずだったのに、私はそこで言い淀んだ。
美奈ちゃんは私をジッと見つめてから、「ふうっ」と唇をすぼめるようにして息をつく。
「適当なこと言ってるわけじゃないですよ、私」
そう言って少し身を起こし、私に上目遣いの視線を向けてくる。
「私……研修医時代の宝生先生、知ってます。いつも忙しくて、あんまり親しく会話したことはなかったんですけど、彼に婚約者がいるっていうのは、聞いたことありました」
「……あ」
美奈ちゃんに導かれるように、私は木山先生にもそう言われたことを思い出した。
彼女は医局の中でも古株だから、研修医時代、祐が婚約していたことを知ってても不思議はない。
「あの通りのイケメンだし……同じ研修医だけじゃなく年上の女性ドクターからも、ずいぶんと誘われてたんですよ。でも、『大事な婚約者がいるので』って、いっつも門前払いしてて」
美奈ちゃんがムキになって言葉を重ねてくる。
私は即座に、「それは」と反論した。
「穏便に断るには、ちょうどいい言い訳だからに過ぎません。実態がどうあれ、そう言っておけば……」
絶対の強気を貫けるはずだったのに、私はそこで言い淀んだ。