イジワル外科医の熱愛ロマンス
自分で言った『断る言い訳』という言葉が何故かしっくりこなくて、胸に引っかかったからだ。


「……雫さん?」


突然黙り込む私に、美奈ちゃんが怪訝そうに呼びかけてきた。
私は自分のカップに目を伏せ、一度首を横に振ってみせる。


カップを口に運び、甘いキャラメルラテを一口含んだ。
ゴクンとゆっくり飲み下すと、喉の奥から濃厚な甘みが広がり、身体全体に浸透していくような気がした。
おかげで、疲れ切っていた思考回路が少し回復したようだ。
私は自分に疑問を投げかけていた。


「祐が? 私をダシに言い訳してまで断る?」


それに対する答えは、私の中には用意されていない。


「だって、婚約者がいても、祐には何人も付き合ってる人がいたじゃない。私、見たもの。……祐が他の女の人と一緒にいるの。いつもいつも違う、別の人で……」

「雫さん。それ、確かですか?」


ブツブツと独り言を呟く私を、美奈ちゃんがそう言って遮った。
自分の思考に沈み込んでいた私は、一瞬なにを聞かれたのかわからなかった。


「宝生先生に、他に何人も付き合ってる人がいたって。たとえば、どこでなにしてるとこ見たんですか?」
< 159 / 249 >

この作品をシェア

pagetop