イジワル外科医の熱愛ロマンス
私の言葉の断片を拾って、中学の時から私には好きな人がいない、二十八歳の今までずっと、という情報に辿り着いたんだろう。


お互い何度も瞬きして、なにも言えないまま顔を向かい合わせている。
なんとも微妙な沈黙が過り、観念した私は、肩を落とした。


「美奈ちゃんは私と木山先生を『恋のキューピッド』と言ってくれましたけど、私にはまったく恋愛経験がありません。私にあるのは、恋愛ゲームの……二次元の創り物の知識だけなんです!」


私にとっては世紀の大告白だった。
すごく恥ずかしくて惨めで、なのに変に興奮して、私は裏返った声で言い切った。


「……二次元」


美奈ちゃんが、呆気にとられた様子で、ポツッと呟いた。


「……はい」


私は目を伏せ、頷きながら短い肯定の返事をした。
リアルの恋愛に真っすぐぶつかっていける美奈ちゃんには、きっと想像もつかない未知の世界なんだろう。
祐にも言われたように、『そんなのが楽しいの?』って本気で考えて頭を働かせてるんだと思う。


「二次元……」


呆けたように同じ言葉を繰り返す美奈ちゃんに、苦笑しながら……。
何故か心が軽く晴れやかな自分に気付いた。
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