イジワル外科医の熱愛ロマンス
そう……祐の言う通り、来たはいいけど、今夜、私は大阪で宿無しだ。


「普通、先にホテル取るだろうが。海外旅行手配する時もそうだろ。旅行会社は、ホテルが取れなきゃ飛行機の手配なんかしてくれねーぞ」


キャンセル料なんか大したことないだろ、と素っ気なく言い捨てられ、私はただ口ごもる。


私だって……美奈ちゃんから新幹線のチケットを受け取った時、一瞬頭が真っ白になった。
でも思い返せば、私が頼んだのは交通手段の手配のみ。
万が一の場合の宿泊手配は完全に抜け落ちていたから、ただお礼を言うしかなかったのだ。
頼んだきり任せっぱなしだった私が悪いんだし、それを今悔やんでる場合ではない。


「一晩夜露をしのげる場所はホテルだけじゃないですし。カラオケボックスとか、インターネットカフェとか、二十四時間営業のファミレスとか……」


美奈ちゃんに教えてもらった、ホテル代わりにできる場所を、私は指折り数え上げた。
なのに祐は、やっぱり小バカにしたような目で私を見下ろし続ける。


「バ~カ。旧華族のお嬢様が、そんなところで我慢できるかよ」

「だ、だから、バカって言わないでください。それに私、普段から贅沢華美な生活してるわけじゃありませんから、一晩くらいならどうとでも……」


『バカ』を連発され、不貞腐れてそっぽを向くと、祐が「しかも」と言葉を続けた。
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