イジワル外科医の熱愛ロマンス
「雫は宿無しで、俺はラグジュアリーツインってどういう格差だ?」


そこを指摘されて、私は肩を落とした。


そっと視線を戻すと、祐は部屋のカードキーの入った小さな封筒を、指先で挟むようにちらつかせている。


「それは……もともと教授がお泊りになる部屋だったから」


目線を横に逃がしながらボソボソと言うと、祐は腕組みした姿勢のまま、「ん?」と眉を寄せた。


「教授と助教じゃ、出張時の宿泊補助限度額が変わってきます。今回、私の交通手段ばかりに気を取られ、押さえてあった部屋のグレードを下げる手配を忘れてまして」

「……はあ?」

「ワンランク下のクラスは、もう満室で変更できなかったんです! だから、私の分を祐の部屋の補助に充てて……」

「見上げたバカだな。っつーか、そんな差額くらい自分で払うわ」


更に呆れ顔で言われて、私はもう反論する余力もない。


「と、とにかく。そういうことなので、これで失礼しますね。私もいっぱいになる前にインターネットカフェ探さないと……」


そう言いながら祐にペコリと頭を下げた。
そのまま彼にくるりと背を向け、すごすごとホテルのエントランスに歩き出す。
それを祐が溜め息交じりに、「待てよ」と止めた。
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