イジワル外科医の熱愛ロマンス
「あ、明日は朝九時にまたこのロビーに集合でお願いします」

「明日のことはそれでいい。けど、雫。お前、どこまで俺を最低な男だと思ってるんだよ」

「え?」


忌々しげな言葉を背中で聞いて、私はそっと肩越しに振り返った。
彼は腕組みを解き、ガシガシと頭を掻いている。


「そこまで最低だとは思ってません。……ただ、傲慢で自分勝手だというだけで」

「あのな。だから傲慢じゃねえって言ってんだろ。……あ~、くそっ。とにかく、来い」


祐は更にグシャグシャと髪を掻き回し、私に大きな一歩で近付くと、いきなり腕をグッと掴み上げた。


「っ、え?」


ギョッとして、祐を振り仰ぎながら声をあげると、彼は私の手を引っ張ってエレベーターホールの方に向かって歩き出した。


「俺の部屋、ツインなんだろ?」

「は? はあ」

「……じゃあ、言い訳できる。問題ない」


祐は私から顔を背けたまま、なぜか強気にそう言って、廊下を突き進んでいく。


「あ、あのっ……?」


困惑しながら呼びかけると、エレベーターが六台並ぶ立派なホールに踏み込んだ祐が、長い指でボタンを押した。


「祐、どこに……?」


苛立ち紛れにブツブツ呟く祐に、私はおずおずと訊ねた。
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