イジワル外科医の熱愛ロマンス
バスローブの袷を気にして、胸元をギュッと握り締めると、私は壁際ギリギリまで逃げた。
祐と十分な距離を取ってから、虚勢を張ってキッと険しい目で彼を睨み上げる。


けれど、祐の方は動じた様子もない。
表情も変えずに「ふん」と鼻を鳴らしただけだ。


「布団の中でボソボソ言ったって聞こえないんだよ。って……」


太々しく言いのけた後、祐は一度言葉を切り、「へえ」と言って片方の手で顎を摩った。
ジロジロと私を見遣り、ニヤリと笑う。
私はドキッとしながら、祐から目を逸らした。


「な、なんですか。そんな不躾に……」

「俺にはちゃんとパジャマを着ろなんて言って、お前もバスローブなんだな、ってね」

「っ、だって、ホテルに宿泊することになるとは思っていなかったから、着替えも持って来てなくて……」

「悪いとは言ってない。そういう姿、初めて見たせいかな……結構そそられる」

「……っ」


祐が意味深に声を低くして言った言葉にギョッとして、私は思わず息をのんだ。


「へ、変なこと言わないでください」


布団を被って先に寝てしまおうと思ったのは、この姿を見られたくなかったせいでもある。
なのにそんなことを言われて、私の頭の中で危険信号が点滅し始める。
< 179 / 249 >

この作品をシェア

pagetop