イジワル外科医の熱愛ロマンス
「なにもしないよ。お前が本当に木山先生の彼女なら、だけど」


焦りまくる私とは真逆に、祐はやけに落ち着き払った声で返事をした。
静かすぎて、その言葉が却って鮮明な音になって、私の耳に届く。


「え……?」


反射的にギクッと身を竦ませる。
戸惑いを隠せていない声で聞き返し、私は恐る恐る祐に目を向けた。


彼は表情を厳しく歪め、鋭い瞳で私を射貫いている。
身体の重心を変えたのか、彼の手の下でベッドが軋んだ。


「雫。木山先生と付き合ってるって、嘘だろ?」


祐が、淡々とした口調で畳みかける。
床に着いていたもう片方の足もベッドに乗り上げ、私との間隔を強引に狭めてくる。


「お、降りてください! それ以上近付かないで……!」

「嘘じゃないにしても、木山先生とじゃ、お前は恋なんかできない。そういうことだろ!?」


パニック寸前で引き攣ったような声を張り上げた。
ところが、早口で低い祐の声に掻き消されてしまう。
動揺して言葉に詰まる私に、祐は膝を進めてくる。


ベッドに両手と両膝を突いた体勢のせいで、祐のバスローブの袷が緩む。
彼の引き締まった厚い胸板が覗いて見えて、私は慌てて顔を背けた。
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